コメット号

最近日本のRCサブマリン界では宇宙系とウォータージェット推進が流行っています。この流れでで私も何か作れないか考えていたのですが、東京創元社からキャプテンフューチャー全集が刊行され始めたのを機会に昔から大好きだったコメット号を作ることしました。来年のJAMSTEC一般公開までに完成を目指します。

作るのはアニメ版のディスカバリーもどきでなく原作版の涙滴型です。原作に忠実にするのならば、方向転換は船体各所に突き出した補助ロケットで行うのが正解ですが、多数の補助ロケットの巧い制御法を思いつかなかったので今回は尾翼で方向転換するようにします。
尾翼を付けるとコメット号でなく宇宙英雄伝説のフォーチュナー号に見えてしまうので出来れば避けたかったのですが仕方ありません。
最初に書いたラフスケッチです。
実際に作り始めたら後部の噴射管のサイズやリンケージのスペースを確保するため、後部がラフより太くなってしまいました。

WTC
モーターは遠心ポンプに直結するためWTCにはモーターは内蔵せずメカとバッテリーのみを納めています。そのためアクリルパイプの直径はtamo2さんの汎用WTCと同じ外径φ60mmですが、全長は150mmとずいぶん短くなっています。

WTCの蓋は3mm厚の低発泡塩ビ板をφ64mm、φ55mm、φ50.5mm、φ55mmに切り出して重ね、φ50.5の部分に内径φ50mm、太さφ3mmのゴム製Oリングをはめて作ります。下側が部品、上側が組んだものです。
部品の切り出しにはオルファのコンパスカッターを使いましたが、刃が小さく3mm厚の切り出しは結構大変でしたが、低発泡塩ビ板は予想以上に加工性が良かったため何とか切り出すことが出来ました。
これらの部品は中心にφ2mmの穴を開けM2のネジで仮止めしながら調整を行います。
φ50.5mmの部品の大きさでOリングとWTC本体との密着の具合が変わりますので、この部品はφ51mmぐらいで切り出し徐々に削りながらサイズを合わせます。最初のうちは嵌め合わせがかなりきついのでOリングに傷が付かないようセラミックグリスを塗っておきました。
部品のサイズ調整が終わったら塩ビ用接着剤でOリング以外の部品を接着し、φ50.5mmの部品の溝部分にEP001を塗り、その上からOリングをはめます。
最初は接着のみでしたが蓋を外すときは結構力がかかり接着だけでは剥れる恐れがあるため、部品中心の穴以外に3箇所120度間隔で穴を開け4本のネジで固定するようにしました。

今ならたもつ模型のエンドキャップセットを使った方が確実でお手軽かもしれません。

蓋の片方にはアルミ板で作ったサーボマウントをネジ止めします。サーボ出力はφ0.9mmのステンレス線です。これを内径φ1mmの真鍮パイプとシリコンチューブで水密します。シリコンチューブの部分にはグリスを入れて防水しています。

本体
本体前部のドーム状の部分は100円ショップで買ったプラスチック製のカップを使用しました。取っ手を切り取り、底の平面部分を曲面にすればイメージに近い形になりそうです。
これにヒートプレスしたコックピット部を付けるつもりです。

本体後部は写真のように低発泡塩ビ板で骨組みを作り外板を貼り付けるつもりでしたが、骨組みの分だけ内部のスペースが小さくなるのと、外板がローポリゴンのCGのように角張ってしまいそうだったのでスタイロフォームで作った原型にポリパテを盛り上げ整形して使用しました。

スタイロフォームは円錐状の4分の1の角度だけMODELAで削りだしました。スタイロフォームはポリパテに触れると溶けてしまうため、直接パテが触れないようにラップで保護してポリパテを盛り付けを4回繰り返しました。ポリパテの硬化時の熱でスタイロフォームが変形しまったのと4つ部品のすり合わせの誤差で少しいびつになってしまいました。とりあえずの試験はこのままで行いますが最終的にはポリパテの盛り削りできれいに整形するつもりです。
普通に考えるとスタイロフォームを円錐状に一体で削りだし、スタイロを溶かさないタイプの樹脂とガラス繊維で作った方が良かったかもしれませんがガラス繊維はチクチクして嫌いなのでポリパテのみで作りました。

尾部のロケット噴射口はφ12mmのアルミパイプを7本束ねて作ります。実際のウォータージェットの噴射口は中心の一つだけで回りの6本はダミーです。 この噴射口部分は原作版では細い噴射口を何十本も束ねて3段組にしていますが、細いパイプでは抵抗が大きくて効率悪そうなので太いパイプとし、そうなるとデザイン的に3段組にはしにくいので1本、6本の2段組です。

アルミパイプと本体との接続部分もMODELAで削りだしました。素材はケミカルウッドを使い表面を瞬間接着剤でコートしそのまま使用します。

尾翼
尾翼部分も低発泡塩ビで作りました。
3mm厚の板から切り出し翼形状に削ります。今は単に切り出しただけです。この状態で操縦性を確認し場合によっては動翼部分を大きくします。

ウォータージェット部
ウォータージェット部は灯油ポンプについていたペラを380モーターで駆動します。
遠心ポンプのケーシングは1.2mmのプラ板で作りました。ケーシングの上下はプラ版から6の字型に切り出し、側面はmm幅に切り出した1.2mmプラ板に曲げ癖を付けて接着しました。
380モーターはスチロールのケースに入れ上部にアクリル板を接着し、アクリル板には水抜き用の穴を開けます。この穴は潜らせるときはOリングをつけたネジで塞いでおきます。
モーター軸の防水はアルミパイプとシリコンチューブで行いました。

レーザー
艦首プロトン砲には2門のレーザーを装備しています。 秋月で買ってきた1個\500の赤色レーザーユニットをエポキシ接着剤で防水しギアchのパルス幅を監視し閾値の1.28msを境にON/OFFの制御します。

噴射管電飾
ダミーの噴射管には青色LEDを6個仕込み、スロットルchのパルス幅に応じてPWM変調しスロットルを開けるほど明るく点灯するように制御します。

電飾制御用基板
電飾用の基板にはPIC16F84、10MHzレゾネータ、FET2個とレーザー用の3.3Vのレギュレータを載せ噴射管のLEDとレーザーを制御します。 4ポートしか使わないので安い8ピンPICでも良いのですが、手持ちのPICライターがそのままでは8ピンPICを焼けないのでいつもの18ピンの16F84を使いました。 受信機からスロットルとギアのサーボ信号を取り出しPICのRB4とRB5に入力し、RA0とRA1はFETを介してLEDとレーザーを駆動します。 ブレッドボードの試験回路ではFETは手持ちの2SK2564を使いましたが、LEDもレーザーも100mAぐらいしか流れないので、小型の2SK974に変更しました。

電源はPICはBECの5V、LEDはバッテリー直の7.2V、レーザーはBECの5Vからレギュレータで3.3Vを作っています。レーザーユニットは定格3Vなのですが3.3Vは多分許容範囲でしょう。

LEDは青色LEDを2個と15mAの定電流ダイオードを直列に接続したものを3組つくり並列に接続します。レーザーユニットは2つを並列に接続します。
ソースリスト

回路図


マグネットスイッチ
松下電工製のDSP-L2-DC12Vというラッチングリレーが千石電商で\100で売っていたのでこれとリードスイッチを使い、WTC外から電源のON/OFFが出来るようにするつもりです。マグネットスイッチのON/OFF確認用もかねてコックピット内を白色LEDで照明します。

RCメカ
コメットはエレボン2ch、ラダー1ch、スロットル1ch、レーザー1chで5ch必要です。 送信機はいつものFUTABA 6EXA、受信機はQUICHの6ch、アンプはQuickの20Aブレーキ無し、サーボはFUTABAのS3103を3個使用します。

舵回りはエレベーターを左右独立して操作できるようにし、エレボンミキシングするように送信機を設定しています。 更にラダーを操作するため3サーボとなっています。

テスト結果
本牧プールでの1回目の試験では沈没が怖くて浮力を強めにしていた為、安定はしていますが潜るのに最高速でようやくという感じでした。
浮力を少なくしてみた2回目は1/3速程度でも十分潜り、ロールも出来るようになり、その後、追浜の3.3mのプールでは宙返りもできました。

本体その2
運動性に問題ないことが確認できたので本番用のハルの製作を始めます。
試作はポリパテの塊で作りましたが、重くなったのと強度に不安があるので今度はチクチクするのが嫌で長年避けてきたFRPで作ります。

まずは原型からです。
前回は船体を4分割して原型を作りましたが組立の誤差などで歪が出てしまったため今回は一体で原型を作ります。
30mm厚のスタイロフォームを円盤状に切り取り、中心にφ6の穴を開けM6の長ネジを貫通させて重ねて接着します。上下をナットで止めボール盤のチャックにくわえて電源を入れずに手で回転させながら大まかに成型します。
ある程度形が出来たところで、ボール盤の電源を入れて回転させカッターの刃を使い旋盤加工もどきで一気に形を作ります。
このときボール盤のテーブル側に写真のように内径6mmのベアリングを仕込んだ板を固定し、長ネジの先端をさしこんで長ネジが振れないようにしました。

このままではスタイロフォームの表面が荒れているのとスタイロフォームに直接樹脂が触れると溶けてしまうので何らかの方法でコーティングを行う必要があります。
今回は使い慣れたファンド(石粉ねんど)で1mm程度の厚さにコーティングし、200番のペーパーで表面を整えました。
これに溶きパテを塗り400番のペーパーがけで最終的なFRP原型とします。

原型を石膏で型取りします。
まず原型を上下で2分割する線を引きカッターで2〜3mmの深さに溝を掘り、0.1mmの真鍮版を割金として刺し込みます。
離型材として石鹸水を塗り、乾いたところで石膏を塗り重ね型取ります。
写真は割金をさした状態の原型です。
石膏を扱うのは久しぶりだったので水と石膏の量がわからず25cmX15cmX7cmの型を作るのに700gぐらい使ってしまいましたが、これより少なくても良かったかもしれません。

原型を外し石膏型にできた気泡を埋めて型は完成です。形状としては上下対称なので石膏型が壊れなければ1つの型から上下のハルを抜くつもりです。
石膏型を十分乾燥させてからFRP成型を行います。
この石膏型に離型材が染み込まないようにラッカー塗料で目止めをおこないました。
続いて離型材のPVAを2回塗ります。

ポリエステル樹脂は結構臭いがするのとグラスファイバーを部屋の中で切るのはためらわれるので屋外で作業します。
夏場なら良いでしょうが冬の外気温では樹脂が硬化しない恐れがあるため電気ストーブを持ち出し暖めながら作業しました。
まず樹脂のみを筆で塗り、べとつかない程度に硬化したところガラスクロスを置き樹脂を染み込ませるように塗りました。
1層目が硬化したら更にガラスクロス1枚を同様に積層します。
何枚積層すれば必要な強度が出せるかわからなかったためとりあえずクロス2枚で半日ほど硬化させて石膏型からぬきました。
抜く際に型の一部がFRP表面に付いたまま剥がれしまいましたが型は補修すれば使えそうです。
強度的には2枚積層では押しても凹むことはありませんがねじり方向の強度が不十分だったため型から外した状態でもう1枚積層し十分な強度になりました。

型の欠けてしまった部分に石膏を流し込みペーパーで段差の無いように補修し同じ型からもう1つ抜きます。
今度は型が壊れても良いと思っていたのでラッカー塗りを省略しPVAのみ、クロスを3枚積層してから抜こうとしたところ抜けません。離型材のせいと言うより2枚ならFRPがしなって抜けたのですが3枚だとしならずに抜けませんでした。
更に力を入れて抜こうとしたら石膏型が壊れてしまいました。
出来れば予備も抜いておきたかったのですが仕方有りません。2つを失敗しないように気をつけて加工することにします。

型からはみ出した部分を切り取り気泡が入っていた部分にパテを盛り整形した後、全体に溶きパテを塗り400番のペーパーで仕上げます。
今回作ったFRP製ハルの重量を測ってみたところ上部ハルが80g、試作のポリパテの上部ハルが270gでしたので上下合わせると380g軽量化できました。
ハルの厚さも5mm程度から1mm程度に薄くなったので内部サイズいっぱいだった遠心ポンプも無理なく入りそうです。

上部ハルと試作から流用の船首部を取り付けます。船首部は難接着性のポリプロピレンなので接着だけでは外れる恐れがあるため、M2ネジでネジ止めし上部ハルとの隙間をエポキシパテで埋めます。
下部ハルにはWTC固定版を2枚と噴射管をエポキシパテで接着します。
また底部の原作では垂直ロケット噴射管があると思われる部分に給水用の穴を6つ開けます。

全体を組み上げてみると原型製作時に採寸ミスが有ったのか、型取り時に分割位置を間違えたのか上下ハルの間に隙間が出来てしまいましたので内側からFRPを1プライし表面からポリパテを盛り隙間を埋めます。
上部ハルの端の黄色い部分がポリパテです。

試作では上下のハルを側面の4本のネジで固定するようにしていましたが、実際には付け外しが面倒なのでネジ止めせず太めの輪ゴムで止めていただけでしたが、上下には余り力がかからないようで特に問題がなかったため今回は船尾側に外れ止めの爪2本を真鍮線で作り、この爪と船首部のネジ1本で固定することにします。

尾翼も流用することにして切ったままだった断面を翼状に成型しました。

キャノピーは1.2mmプラ板を使いバキュームフォームで作りました。
窓の部分に穴を開け、裏から同じくバキュームフォームで成型した透明プラを貼り付けます。
写真は自作のバキュームフォーマーで透明パーツを成型したところです。
今は空ですがコックピット内部も(当然フューチャーメンも)後ほど製作します。
次の本牧の試験後に全体を1000番程度のペーパーで仕上げ、スジ彫り、リベット打ちを行う予定です。

WTCその2
本牧の1.5mでは問題の出なかった簡易WTCですが追浜の3.3mでは浸水があり、受信機が水をかぶって一時的に不調になってしまいましたので、たもつ模型のエンドキャップセットを使って作り直しました。
サーボマウントは前回作ったものを流用し、エンドキャップの片方に電飾用電極6つ、モーター用電線2本、リンケージ3本、サーボマウント固定用ネジ穴2つの穴を開けます。
前回は電飾用の電線をまとめて1つの穴から出し電線の回りをエポキシで固めていましたが、電線の芯線と被覆の間からの浸水もあると思われるため、今回は電飾用はφ1の真鍮棒を埋め込み、瞬間接着剤で隙間を埋め防水します。
この電極にWTCの外でコネクタを接続しハルとWTCを切り離せるようにします。
電飾は大した電流が流れるわけではないのでコネクタとしましたが、モーターは数Aの電流が流れるためコネクタは使わず前回同様に電線周辺をエポキシで固めています。

またマンタモドキで使っているFUTABAの受信機と比べてQUICKの受信機の方が湿気に弱い印象がありますので、多少の浸水があっても大丈夫なように基板をエポキシで固めました。
電飾基板は今のところ問題ないのですが保険で同様にエポキシで固めました。

とりあえず全てを組み付けて浮力調整を行いました。
重量は920gで試作から約40%減になりました。スピードアップが期待できそうです。
重量減により浮力材の量も半分以下になりました。